Life Point

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第1話 「始点力点作用点!」

20XX年
化石燃料を主とする人類の文明
環境の悪化は相変わらずで後数年ほどで化石燃料も尽きようとし、やっと一部の者達によって少しだが改善の兆しが見えた頃


・・・・それは天の恵みか
それとも異星の文明によるものか
・・・それは落ちた

それは全長1m近くの琥珀色の小さな隕石
そして、その中に秘められた未知の力を知った人類は、未来への希望を感じた、心から・・・・・・だが

それは消えた。
忽然と、研究施設の爆散と共に・・・

希望の紛失に人類の大半は失望した。
しかし、これにより人類は改めて自分達の立場を認識したのか、
はたまたこうなること知っていた神の策略か、ようやく人類の大半が地球の事を考え始め、再生を目指した頃・・・・・



7月〇〇日

「台風」
その日は川が氾濫しかねないほどの大雨が、地面いっぱいを水で埋めつくさんとする
そんな中、傘に体を必死で隠し、朝早く登校する少年の姿がひとつ・・・
「くそ、なんで暴風警報出て休みにならないんだよ!」
誰一人いない大雨の中を俺こと高波栄介はそんな愚痴をこぼしながら進む
いつもは気にも止めないこの緩やかな川沿いの通学路、しかし、今日に限ってこの川が氾濫しないかと少し不安になる
「ホント・・・帰ろうかな」
すでに水を大量に吸ってしまった革靴と靴下を眺めつつ溜め息を付く
「ハァ、でも単位やばいしな」
現在、高校3年の俺は推薦でたまたま大学に受かり、もはや卒業以外で学校に行く理由がないが・・・・・・、
最近調子に乗って休み過ぎたせいで単位がやばい
この3年間結構ズル休みが多かったから、もはや一日も休めない
こんな状況は正直「だるい」以外の何者でもなかった
「まぁ・・・いっか」
俺の口癖だ
そんなことを思いながら歩いていると、いつもの上り坂に差し当たる
タダでさえいつも登るのがメンドいのに・・・
今日は水が滝の如く流れて歩きにくい上に、冷たいし、何度か滑りそうになりながらやっと登る
「やっとか・・・ハァ」
ようやくこの試練とも言える苦境を乗り越えた俺は大きくため息をつく
だが、その安堵のため息は一瞬で打ち消される

「危ない!!」
今日が雨で視界が悪かったせいか、坂を上がってすぐに現れた黒いフードのに正面から突き飛ばされて
一緒に坂を一気に滑り落ちるハメに
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
びしょ濡れになりながらも坂の途中の段差でなんとか体が留まる
「いってぇ━、なんだよ一体!!」
体を起こしながら呻く俺は自分と共に滑り落ちた黒いフードの主を睨む

「危ない!!」
いきなりフードの主は素早く立ち上がったかと思うと、俺を押し倒す
「うおぉ?!」
今日の俺の体は俺の意識とケンカ中なのか・・・ことごとく俺の意識の範囲外に行こうとする
そんな中、“眼”と“耳”が同時に別々の衝撃を俺に教える
まずは“眼”、それは俺を掴んだフードの主の顔
その時覗けたその顔は・・・女の子だ
その眼は吸い込まれるような深い黒でまっすぐ俺を見つめている
髪は紺色でポニーテール、髪留めはやたら長いリボン

結構俺好みかも・・・
などと妄想した僅か1秒にも満たない時間に今度は“耳”から突然の爆音が伝わる
「な、なんだ?!」
驚いて振り向くと、先ほど転がり落ちた場所に、手榴弾でも爆発したのかと言わんばかりの窪みがある
「・・・・・・」
俺は言葉を失う
あまりに突然な現実に
「大丈夫?」
呆然としていた俺はその言葉でふと我にかえる
「ごめん、立てる?」
俺に語りかけ手を差し延べる明らかな女性の声に、俺は振り向きその少女を見つめる
そして、立ち上がりながら腕や足を振り体についた水を降り払う、横目でその子を見ながら
身長は俺より拳ひとつ分ぐらい低い
どこかでこんなゲームキャラいなかったか?
そうやって観察するのも束の間、坂の上からこの大雨でも聞こえるカン高い声が響く。
「オーホホホッホ、もう逃げられなくてよ!」
俺は声の主を見上げた。
それはどこぞの西洋貴族かと思いたくなるような風貌
カールを幾重にか巻いた金髪のロング、ピンク色のフリフリ傘にドレス
これから社交パーティーか仮面舞踏会にでも行きそうなどこぞの令嬢の格好である
でもその格好は俺の一般的常識論で言うと・・・・ただのイタイ人だ
などと思っていた矢先、先程の少女が突然の大声をあげてイタイ人に言い放つ。
「なぜ他の人を巻き込むの!あなたの狙いは私でしょ?」
何の話だかよくわからんが、こんな展開をゲームでやったことがあるような・・・
なんて思っていると再び令嬢さんが話し掛ける
「フフ、だってあなた結構甘っちょろいじゃない、だから・・・」
すると令嬢(?)はなぜか傘を閉じてその先端で地面を叩いた
こんな大雨でそんなことするなんて・・・いよいよ本当に(ry
などと思った自分の第三者的観点は見事に突き崩される
「なんだありゃ・・・」
傘で叩いた場所のコンクリートが割れてそこから3m位ありそうな岩の塊が飛び出し宙に浮いている
「おい、まさか・・・」
俺の脳裏にはたった一つの悪い予感が浮かんだ、そして、それは辛くも的中することとなる
「お逝きなさい!kcor・tellub!」
彼女は意味不明な言葉を発し傘の先端を俺に向けると、予想通りその岩は俺に向かってまっすぐ突進してきた
「ちょ・・・ま・・」
俺は身動き一つできなかった、この時一瞬、記憶が走馬灯のように・・・
「!!」
なったのも束の間、いつの間にか先程の少女が俺の前に立ち、岩に向かって掌を向けていた
そして・・・唱えた
「esolc・ecaps!」
先程の令嬢の発した言葉となんとなく似ているその呪文のような言葉は、
彼女の眼前に岩と同じぐらいの大きさの黒い穴(のようなもの?)を作り出した
直後、向かってきた岩は吸い込まれるようにその穴に消え、共に消滅した。
「・・・・」
そのあまりに現実離れした一瞬の出来事で俺はパニックに訳わからずじまいで叫んだ
「・・・なんだこれは!此処は魔界か?!
なんで突然俺はこの状況に巻き込まれる形になっているんだ?
誰か400字詰め原稿用紙に簡潔にまとめてくれ!」
もう何がなんだか分からずじまいで混乱する俺に、少女は両手を取り言った
「ハァ、ハァ、ごめんなさい、こんなことに巻き込んで、だけど今は、今だけで良いから・・・私を信じて!」
少女の漆黒の眼は必死だった
そして同時にその眼には今にも泣きそうな不安も感じ取れた
俺こと高波英介は昔から泣いてる子供と捨てられた犬には弱い男であった
そんな俺が必死で「信じて欲しい」と訴えかける一途な少女を信用しないのかと言われると・・・
それに、先ほどの攻撃から身を呈して守ってもらった事もある
・・・答えは決っている
「わかったよ、君を信じるよ」
その言葉を聞くと少女の不安げな眼が安堵のため息と共に緩み、顔からは笑みがこぼれる
その笑顔にドキッとしたのは秘密である
しかし、そんなキャラメルのような甘い妄想に浸っていられるほど現実は甘くない
「あらあら、そんな所で雑魚を一匹手懐けた所であなたに勝ち目はなくてよ」

現状を観るに確かにこの二人の先ほどのやり取りを考えると自分の存在は「雑魚」か「足手まとい」なのは無難だ
しかし・・・、あの甲高い声で言われるとなんかムカつく
だが、俺の怒りより強く罵声が飛ぶ
「五月蠅いわよ!例え戦力で劣ってようとも、時代遅れのコスプレなんかに負けないわ!」

一瞬その場の空気が凍る

「・・・・・殺す!!」
よっぽど癪にさわったらしく、周りの雨が蒸発しかねんほど顔を赤くして怒る令嬢
途端に物凄い殺気のようなものを感じ、俺は少し後ずさりする
そんな俺とは逆に少女はその殺気を跳ね返さんとするかのように同じく殺気を放ち言う
「殺す?そう言っても、さっきから小石一つ当たらないじゃない!現実を見てから物を言いなさい!」

なんか・・・この二人の関係は知らないが、因縁があるということだけは確かなようである

「良いでしょう、ならば」

令嬢は再び傘で地面を叩く、すると、今度は無数の小石がコンクリートを割って飛び出てきた。
「今度も防ぎきれて?」

最悪だ、あんなにいっぱい反則だろ!
しかし、少女は屈する様子はなく

「質より量か・・・そんな小石ごときで!」

と少女は令嬢に向かって掌を向ける
令嬢も透かさず迎え撃つ

「ならば受けてお逝きなさいなさい! kcor・niar!」

雨に紛れて降り注ぐ石の礫

「君!私の後ろに」
少女は俺を石の雨から庇うように自ら一歩前に出て・・・唱える

「esolc・ecaps!」

相変わらず意味不明な言葉だが、今度も先程と同じく少女の掌から体を覆うほどの黒い穴が出現し、石の雨を吸い込む
流石に全て吸い込むわけではなく、自分に当たる最小限だけをカバーするため、横をそれる石がコンクリートの地面に激しくぶつかる
そのたびに銃声のような音が響く

そして
全ての石が降り注ぎ終わると、辺りは所々コンクリートが砕けて土が捲れている

「まるで爆撃地だ」

まさに無数の弾痕がその場に跡を作っている、それに一瞬見とれはしたが、すぐさま状況を思い出し振り向いた・・・しかし

「いない?!消えた!!」

先程の坂の上には令嬢の姿がない

「一体どこに・・・」

雨のせいで視界も悪く、音も聞きにくいこの状況で、敵を見失うのは一種の恐怖でもある
だが、こんな中でも目の前の少女は慌てた様子もなく、むしろ目を閉じて耳をすませているその様子は実に落ち着いた様だ
そして

「下よ!!」

少女の声が聞こえたのとほぼ同時にコンクリートの地面を突き破っり、傘をドリルにして令嬢が少女目掛けて飛び出てきた

「だが、遅い!!」
それに反応し、少女は素早くバックステップでかわす
それと同時にどこからか出したナイフを額めがけて投げる

「ギャアアアァァ!!」

ナイフは見事に額に命ちゅう・・・

「な―んてね!」

・・したが、よく見ればただの土人形
そして上空からの声に反応した時はすでに遅かった

「かかりましたわね!dnas mra!」

呪文が聞こえたかと思うと、土人形は無数の腕(触手?)のようなものになりを少女を襲う

「きゃ!は、離せ!」

少女は必死にナイフで切り払うが腕は切られても瞬時に再生してしまう

「・・・なんかどこかで見たような光景だな・・・ってそんな事言ってる場合じゃない!」

俺は少女を助けようと無我夢中で走り出す・・・しかし、

「お邪魔よ!」

と再び俺に傘を向けを少女襲っているのと同じ土の腕を作り出す

「っ、やろ、はなせ!」
無数の腕に掴まれて身動きできない、そんな俺はそっちの気で令嬢はゆっくりと少女に近付く・・・そして、

「あなたもここで終わりですわ、お逝きなさい!」

令嬢は緑色に光る尖った傘の先端を少女へ向けて構える。




“見ることしかできないのか?”

“目の前で起きる惨劇を止められないのか”、

“何故俺には力がない?”



「ぐ、がぁ」
傘の先端が左肩に突き刺さりそこから血が流れる・・・・俺の血が

「!!なんですって!?どうやって!?」

令嬢が驚くのも無理はない、なにせさっきまで土の腕に掴まれていたはずの一般人の俺が、
その腕をほどいて、見ず知らずの少女を守る為に自らその間に割り込んで来たのだから。

「・・・・ぐ、早く」

吐血しながら俺は左肩に刺さった傘を右腕で全力で掴む。

「っ、放しなさい!」

アリアは予想外の事態に慌てふためいていたが、少女はその隙を見逃さなかった。

「ぐふっ、え・・・」

少女の投げたナイフは令嬢の喉に刺さる。

「・・・・・・と・・っ」

喉を刺されて声にならない声を発し令嬢は仰向けに倒れようとするが、
そこには普段はあるはずの川へ落ちない用の金網はボロボロで背もたれにすらならない
なぜなら令嬢がバラまいた石により金網はいたるところ虫食い状態
結果令嬢の後ろの金網は役目を果たさず、令嬢は無言のまま川の中に消えていった

それと同時に少女を襲っていた土の腕がサラサラと崩れ落ちる。

「・・・・へ、ざまぁ・・・」
ないぜ、と言おうとするが・・・

「っ、君!!」

後ろで叫ぶの声を聞きながら俺も地に横たわる。
「・・・・・此処は」
見慣れた天井、嗅ぎなれたベッドの匂い
「俺の部屋・・・」
そして左には見慣れた姉と・・・もう一人
「姉貴・・・」
俺の顔を見てホッとする二人

「あぁ、良かった、栄介!心配かけて!こんな台風に無理して行こうとするからそうゆう目に会うのよ!」


なんか寝起きで大声出されて頭の中が混乱しているが、徐々に思い出してきた・・・
「・・・あ」

俺はさっきまでのことを思い出した
そして、これを話すべきか悩んだ
そんな中、姉が不意に口を開ける

「もう・・・あんたが飛んできた木材で怪我したのをこの子が助けて此処まで運んでくれたのよ!お礼言いなさい!」

・・・俺は沈黙した
そして、それが少女の気遣いだと気づいた
考えてみればこんな話をいきなりしても正直イタい人にしか見られないであろうそこで俺も話を合わせることにした

「え、そうなの?!あ、ありがとう!え〜っと」

そこで気づく
彼女の名前を知らない

「萩山由香よ、高波栄介君」

少女は俺にそう言うとニコリと笑った

その時の俺の顔に何か書いってあったのか、横で見ていた姉は俺を見て笑う

「うふふ、じゃあ私は飲み物でも持ってくるわね」

姉貴は俺が大丈夫そうなのを感じたのか、それとも何か別の意図なのか、安心した様子で部屋を出る。
姉が部屋を出たのを確認して俺はは話を切り出す

「・・・・色々と聞きたいこともあるが、取りあえず助けてくれてありがとうな!由華ちゃん」

俺は微笑んで話した、何よりもお礼は明るく言うべきだからな(持論)

「礼なんかいい、お互い様だ・・・・それに私も色々と話そうと思っていたからな、それよりも・・・」

なぜか由華ちゃんは急にそっぽをむいた

「そ、その、ちゃ、ちゃんづけで呼ぶのはちょっと・・・私はこれでも18だし」

・・・・意外とシャイな子だ、って言うか18!?

「じゃあ同い年!?」

驚きの俺に彼女は軽くうなずく。

「・・・あらそうかい、じゃあなんて呼んだら良い?」

どう見ても俺と同い年には見れないが・・・
そんな彼女の人間味ある所を感じながら問う

「ちゃんづけでなければなんでも良い」
あいまいな返事をしてくるからからかおうかと思ったがここは素直に答えた

「じゃあ“由華”、改めて今日はありがとうな」

今度は由華も笑顔で返す
満面の笑みで

「どういたしまして」

とある夏の日のこと
突然事件に巻き込まれた俺
これから色々と大変な状況になるとは知らない俺は
その少女の一途な表情に一瞬ドキッとしてたりした

今日この頃である。